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買受人の納付した代金についての配当手続きがとられるのですが、配当をうける債権者が一人であるとか、二人以上いても、競売費用のほか各債権者に十分配当できる財源があるときは、格別問題がありません。
しかし、このような場合を除いて、各債権者への配当のためには、裁判所は配当期日を定め、配当表を作成して、厳格な手続きで配当を実施することにしています。
多数の債権者に、その権利の順位と債権額にしたがって正確に競売代金を分配するのは、かなりむずかしいことですが、配当について債務者あるいは債権者に異議があるときは、訴訟による強制執行はどのように行われるかつて解決することになります。
強制執行の手続き等について規定している法律(民事執行法)は、強制執行の対象物によってそれぞれ多少異なった取扱いをしています。
そしてそこで“動産”とされているものは通常の(民法上の)動産の範囲と必ずしも一致していません。
しかしここでは、いずれからしても“動産”とされるもの、典型的には債務者の住居の中にある家具・食器とか、工場や倉庫内にある機械・器具・原材料・製品等の有体動産を対象とする強制執行を念頭において下さればよいでしょう。
このような動産の詳細を債権者があらかじめ競売の申立書に差押えの目的物として列記することはできませんので、中立書には単にその所在する場所だけを記載することになります。
動産の競売の申立ては(不動産のように裁判所ではなく)執行官に対してするのですが、これは現実に債務者の住居等におもむいて、債務者の占有する物を個別に選んで差押える(封印、あるいは差押物件標目標を貼布する)という作業の性質上、執行官が担当するのに適しているからです。
差押え物については、調書を作成のうえ、債務者に保管させるのがふつうです。
なお、債務者の生活や職業上必要な物については、差押えが禁止されています。
動産競売が不動産の競売と異なることは、他の債権者のした競売手続きに便乗し、配当要求という形で売得金の分配にあずかれるのは、先取特権または質権を有する債権者に限定されていることです。
先取特権者にこれを認めたのは、先取特権によって担保される債権者を保護するという社会政策的配慮によるものであり、質権者の場合は、その占有している質物を自発的に執行官に提出し、質権の実行に代えて競売手続きの中で優先配当をうける、という方法を認めるということです。
動産の差押えには、それを申立てた債権者の債権額および執行費用の弁済に必要な限度を超えて差押えてはならないという、超過差押え禁止の原則が適用されます。
したがって不動産のような二重差押えは許されず、他の債権者のした差押え手続きに便乗し配当要求するということも、例外以外は認められていないのです。
ただし、同一の債務者の所有する動産で同一の場所に所在するものについて適用されることであって、同一の債務者の所有する動産でも所在する場所が異なるものを他の債権者が差押えることには、なんの制限もありません。
また、同一の場所に所在する動産について、すでにある債権者が差押えた後、他の債権者による差押えが行われた場合は、二つの事件は併合されます。
この場合は、先行の手続きで差押えた動産と、後行する手続きにより新たに差押えた動産を先行の差押え手続きによって一括競売し後行の債権者はこれに配当要求をしたものとして扱われます。
後行の債権者による手続きでもはや新たに差押えるべき動産がなかった場合も同様です。
二つの事件が併合された場合でも、先行の債権者に、競売代金について特に優先権が認められるわけではなく、平等主義によって配当されますから、債権の十分な満足が得られなくなることは避けられないでしょう。
債権にもいろいろの種類がありますが、ここでは売掛金とか銀行預金あるいは給料などの金銭債権を対象にする強制執行について説明します。
すなわち、甲が乙に対し債務名義のある債権を持ち、それに基づく強制執行として、乙が丙(第三債務者)に対し有する金銭債権を差押える、という場合です。
差押えの申立てに際しては、乙の丙に対するどのような債権について、甲はいくらまで差押えをするのかを明らかにする必要があります。
もっとも、甲は乙に対し一〇〇万円の債権があり、乙の丙に対する債権が二〇〇万円であるというときに、甲は一〇〇万円しかこれを差押えてはいけない、という超過差押え禁止のルールは、ここでは適用されません。
もちろん、甲が自己の債権額の限度で差押えることは差支えありませんが、二〇〇万円全額を差押えてもかまわないわけです。
これに対応して、他の債権者(甲)のした差押えに、同じ乙に対する別の債権者が配当要求をしてくることが認められています。
差押えの対象となる債権が給料や俸給である場合は、その支払期にうける額の四分の三に相当する部分は差押えが禁止されます。
全部を差押えられたのでは、乙は生活できなくなるからです。
たとえば乙が丙から毎月月給として二〇万円をもらっているのであれば、甲が差押えられるのは毎月五万円まで、ということになります。
ただし、毎月二一万円を超える給料をもらっている人であれば、二一万円を超える額は差押えてよいとされます。
たとえば月給が六〇万円であると(その四分の三は四五万円ですが)、三九万円までは差押えられてもやむをえないということになるわけです。
なお退職金も差押えることができますが、この場合はその額のいかんにかかわらず、その四分の三を超えて差押えてはいけない、とされています。
甲の申立てに基づく差押え命令は債務者(乙)および第三債務者(丙)に送達されますが、差押えの効力は命令が丙に送達された時に効力を生じます。
その結果、乙は丙から債権を取立ててはならず、丙は乙にその債務を弁済してはならない、という制約をうけます。
ただし、丙が乙に、差押え前から反対債権を持ち、かつ、両債権がすでに弁済期にあった場合は、丙が抱いていた相殺の期待権をうばわないという趣旨から、甲から差押えをうけた後にする丙の相殺は許されることになります。
しかし、差押えをうけた後に丙が乙に対する反対債権を取得しても、これによって相殺することは許されません。
問題は、丙には差押えをうける前から取得していた乙に対する反対債権があるが、自働債権(丙の乙に対するもの)あるいは受働債権(乙の丙に対するもの)の双方または一方の弁済期が未到来の場合は、受働債権について甲から差押えをうけた後に相殺ができるか、ということです。
これは銀行(丙にあたる)がその顧客(乙にあたる)の預金について差押えをうけた後に、乙に対し有する債権を乙の預金と相殺して回収できるか、という形でもっとも問題になります。
甲にすると債務者乙に対する強制執行の対象として、乙の丙銀行に対する預金債権はもっとも確実なものであるのに対し、銀行が顧客に対し有する債権の回収方法としては、預金との相殺がきわめて重要な機能を果たしているため、法律的にも社会的にも、この問題をどう扱うかは、たいへん大きな意味があるのです。
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